愛しの旧車達
「私、最初の車が『日野コンテッサ』やねん」 鳳駅前の居酒屋で、「鳳の女王」と自称するママの若かりし頃のお話を拝聴。
旧車に詳しくは無いが『コンテッサ』とは1960年代、日本の自動車生産の黎明期に確かルノーとの技術提携か何かで日野自動車が生産したRRのクーペ。
「前がトランクで、後ろにエンジンあってんで」 「私の他に、この辺で乗ってる人、おらんかったんやで」
ママが熱心に自慢するだけあってミケロッティによるイタリアンデザインのその車は優美で流麗、これをうら若き女性が颯爽と駆っていたら、さぞかっこよかっただろう事は頷ける。
(そう言えば・・・)
亡くなった親父も同時代に洒落た名前の車に乗っていたなと思い
「うちの親父もカルマンギアだったか、乗ってましたわ」
何気に言った瞬間、
空気が固まってしまった。
「そら・・・すごいやん」
勢い良かったママの自慢話も打ち切り終了となり、隣に座っていたジェントルなドクター(普通の町医者だと思ってたら、随分高名な方らしかった)までも「おぉ・・」という始末。
(えっ、そんなに)
と思ったが、当時の感じや車自体の価値がよくわからないので、その反応を消化出来ないまま別の話題へと切り替わってしまった。
少し気になったので、帰ってから調べてみた。
ごめんなさい!
家の親父が乗っていたのは『ヒルマンミンクス』でした。調べたところによるとイギリスのメーカー「ルーツ自動車」から全部品を輸入しイスズ自動車が組み立てた所謂ノックダウン生産されたもので実用車然とした車。
対して『カルマンギア』は純粋にVW社生産のスポーツカータイプの車(とってもカッコいい!)。
デザインも成り立ちも全く異なり、似てるのは、「何とかの何とか」というハライチ的二音節の車名の雰囲気だけ。
多分、性能も評価も値段も大きく違うんだろう。
見栄を張る気も、悪気も無かったが 黙らせてしまった皆様、ごめんなさい。