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栗駒山系の

清き清水に育まれ

 

石巻から宮城内陸へ車で約1時間。山深き地に、親子二代に渡って稚魚養殖を行う佐藤朗さんの稚魚養殖場があります。場所は秋田、岩手と県境を接する宮城県栗駒市。人家も農地も遠く離れたこの場所で、銀鮭は十二月に産声をあげ、翌十一月、海へと旅立つまで、丁寧に丁寧に育てられます。

北に連なる栗駒山系。そこに降り注いだ雨や雪は、地中で磨かれ、透明度の高い豊かな伏流水となって再び地表へと涌き出でます。温度は年間通して10度〜11度と一定。生簀は、この伏流水で満たされます。

​こんこんと湧く伏流水が絶えず注ぎ込まれ、生簀は水底や稚魚の一匹一匹まで肉眼で確認できるほど透明です。稚魚たちにとっては、揺りかごのような生簀なのです。

​稚魚の成長に合わせてきめ細やかに

きめ細かに十二月末の孵卵から翌年十一月の出荷まで使い分ける飼料は大きく分けて2種。そのうち、最初に与える飼料は稚魚の日々の成長に合わせてなんと5段階にも分かれています。

「孵化は屋内の生簀で。生まれてからしばらくはここで育てます」人で言えば、さしもの保育器。この時期は後の成長に大きく影響するとりわけ大切な時期です。

「餌付けは特に慎重になりますね。ここが上手くいかないと、養殖が成立しませんから」

最初に与える飼料は、人間の赤ちゃんにミルクを与えるのと同様、タンパク質主体。まずは基礎となる骨格と体を作ります。

稚魚に寄り添って

稚魚への給餌に、決まった時間や決まった回数はありません。

稚魚の様子を観察し、欲しがる時に欲しがる分だけ小さなスプーンで少しずつ、少しずつ、餌を与えます。それはまるで赤ちゃんを育てるお母さんのよう。途方もなく手間がかかります。

「まとめて餌をやると楽でしょうけど・・・そうすると、どうしても食べ残しが水底にたまり、水質が汚れてしまいますし、病気の要因になりかもしれない」

 

手間はかかっても、やはり手を抜く事は出来ないと話します。

「稚魚はとても正直。だから、私も正直に稚魚に向き合わねばと思っています。正直に懸命に向き合っていれば、しっかり応えてくれますから」

 

「私の稚魚に信頼を寄せ、待ってくれている浜の漁師さん、その漁師さんが育て上げた銀鮭を食べてくれるお客さん。私の仕事の後には、多くの人が連なっています。その人達を裏切る事は出来ねぇですし、元気な良い魚育てないと申し訳ねぇ」と静かに餌やりを続ける佐藤さん。静かな時間が山間に流れます。

 

河川水の生簀で

 

養殖場のすぐ側を流れる河川は、ヤマメやイワナなども生息する清流。

5月のGWを迎える頃、山肌を削る雪解け水の流入で少し濁っていた水も、本来の透明感ある水質に落ち着いてきます。

その水質を見極めて、伏流水の生簀から河川水の生簀へと稚魚は引っ越します。

 

「河川水は、夏の到来とともに、気温に応じて徐々に温度上昇していきます。鮭の活動も活性化して、目に見えて大きくなっていくんですよ」と佐藤さん。その成長を支えるため、飼料は第二段階に切り替え。

タンパク質主体に変わりありませんが、ぐんと脂肪分や炭水化物の比率が増えた組成となり、銀鮭の旺盛な食欲に応えます。

夏を越し、秋も終える十一月を迎える頃、

20cmほどにも成長した銀鮭は、いよいよ海へと旅立っていきます。

 

銀鮭の基本を支える

 

佐藤さんに、稚魚を育てる上で最も気を使う事をお聞きまた。

「稚魚はとっても繊細なんですよ。水質の汚れなどはもちろん、物音なんかでもストレスになって、餌を食べなくなる事もあるんです」

静かに静かに穏やかに、ゆったりと作業をする佐藤さんの動きも納得です。

「後は、やはり水質。とにかく異物を入れないように目を配っています」」

薬を使用しない生簀で繊細な稚魚を育てるには、それが生命線。

こんなコツコツと毎日を積み上げるような努力があってこそ、三陸銀鮭の品質があるのです。

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